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2023/5/29
【月末オピニオン】 インバウンドだけでなく、アウトバウンドも推進を

3月1日から再開された国際クルーズ船の日本寄港。5月も残りわずかになると、大半の外国籍のクルーズ船は日本を離れ、ある船は太平洋を北上して米アラスカ方面に、別の船は南下して東南アジア方面へ−と、次の目的地に針路をとっている。全国の港湾関係者の受け入れ対応はようやく一段落した感はあるが、月末から6月初めにかけては台風2号が先島諸島から沖縄近海に襲来する模様で、複数のクルーズ船が予定航路を変更しているようだ。
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2020年の2月後半以降、実に3年ぶりとなった「春の寄港ラッシュ」を何とか終えたある港湾関係者は、こう振り返る。
「コロナ禍もあって、国際クルーズ船の受け入れには相当気を使った。ただ、受け入れ側の港湾関係者らが考えていたよりも、本船側の新型コロナ対応はドライで、感染防止に向けた各種対応で岸壁がピリピリ緊張する−という場面は、ほとんど見られなかった。また、乗客らの新型コロナ感染はゼロではなかったが、パンデミックが起きることはなく、地元の保健衛生当局に面倒をかけることもなかった。次の受け入れピークは、夏のアラスカ配船が終わる9月半ばからの予定だが、当面は気を緩めることなく感染防止対策についても粛々と進めていこうと考えている」
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一方、日本寄港や日本発着を運航した外国クルーズ船社の関係者は、春の寄港ラッシュを無事に乗り切ったこと、その中心的な役割を果たした港湾関係者への賛辞を惜しまない。
「3年ぶりとなる春の日本寄港を、大勢の欧米からの乗客に楽しんでいただき、受け入れに当たった港湾や観光関係者にはたいへん感謝している。秋以降、再び国際クルーズ船の寄港はラッシュを迎えるので、引き続き心のこもったおもてなしを期待している」
ただ、一部の外国船社関係者は「日本寄港は盛況のうちに終了した」ことは認めながらも、浮かない顔している幹部が少なくない。
「寄港先としての日本が、船社や乗客から高い評価を受けたことは間違いない。今秋も、そして来年、再来年も日本寄港を盛り込んだクルーズは着実に増える傾向にある。ただ、集客先(ソースマーケット)としての日本の評価は真逆で、今以上に集客実績を積み上げていかないと、アジア市場の中での日本の存在感がなくなる。6月半ば以降、中国の国際クルーズが再開され、来年から欧米クルーズ船社の中国配船などが復活すると、船社の注目度は日本から中国に移るのは確実だ」
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コロナ禍を経て、日本人の海外旅行は国内旅行に比べて回復が遅いという。クルーズ分野も同様のようで、インバウンド(日本寄港)誘致だけではなく、アウトバウンド(F&Cなど)も推進していかないと、外国船社の関心をつなぎとめることはできないかもしれない。
(みなと総合研究財団・クルーズ総合研究所副所長 沖田一弘)

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