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2024/9/30
【月末オピニオン】 明日から年度下期、誘致活動は乗客ニーズ見極めて

国際クルーズ船の日本寄港が再開されて1年半余り。ひところ大騒ぎになった「クルーズ船来航による新型コロナウイルス(COVID−19)感染症の拡大」を口にする市民や業界関係者は、ようやく「ほぼ」いなくなった。その代わり、寄港時のオーバーツーリズムや排気ガスによる港周辺の環境汚染などを懸念する市民団体の動きが顕在化し始め、以前とは全く異なる視点でクルーズ船を見つめる関係者が増えている。
秋のクルーズ船寄港ラッシュ真っ盛りの今、こうした周囲の声を聞きながら、日々クルーズ船の受け入れに汗を流す港湾管理者や港が所在する自治体の皆さんは、コロナ禍とはまた違った「向かい風」の中で受け入れ対応に当たっている。今日9月30日で今年度上半期が終わり、明日から下半期が始まる。全国各地の港湾ではあと1カ月半ほど、国内外のクルーズ船寄港が目白押しで落ち着かない日々が続くだろうが、下期の声を聞くと各地でクルーズセミナーや商談会、ファムツアーの準備に追われる港も少なくない。

今年度も夏前から、複数の港湾関係者から弊財団に問い合わせがあり、晩秋から年明けにかけて域内のクルーズ振興を目的としたセミナーやシンポジウム、地元受入関係者と業界キーパーソンの商談会、新たな寄港地観光素材の開拓と紹介を目的としたファムツアー実施に向けた相談が寄せられている。ある港湾関係者は、今年のセミナー&商談会について、以下のような取り組みをメインに実施できないかと連絡してきた。
「本県には国内外のクルーズ船が年間数十回寄港する●●港があるが、ほかに東部や西部にも港があり、可能であればこれらの港に相当数の寄港を実現したい。そのためにも、中小型のクルーズ船を運航する欧米船社や、近年の来航数が多い小型探検船を運航する外国船社に現地を視察していただき、2〜3年後の初寄港を期待したい」
上記に類似した話は、他の地方自治体関係者や国の行政関係者からも、たびたび相談されることがある。そのキーワードは「特定港湾だけでなく、県内の港に『万遍なく』クルーズ船を寄港させたい」というフレーズに集約できる。

なるほど、自治体や港湾管理者の話を聞くと、その気持ちは分からないでもない。仮に「県内に3港」あったとして、メインでクルーズ船が来航するのはA港ばかり。他のB港やC港には「たまに」寄港するくらいでは、そうした状況を変える取り組みを模索したくなるのも理解はできる。
ただ、このケースでは、寄港するクルーズ船社のツアー造成担当のことを考慮する必要がある。「なぜ、寄港がA港に偏っているのか」「代替としてのB港やC港利用では、どうしてダメなのか」「乗客が喜んでくれる寄港地観光の素材は、B港やC港の周辺にはないのか」−こうした点について、きちんと精査して寄港が偏っている理由を把握していなければ、B港やC港の寄港増実現は難しいだろう。
港湾や地元受入関係者の貴重な予算を使って企画、実施されるクルーズ振興に向けたセミナーやファム、商談会。コロナ禍以降、全国の港を俯瞰するとそうした取り組みは年を追うごとに増えるばかりだ。その締めくくりとも言えるのが、毎年春に米マイアミで行われる「Seatrade Cruise Global(シートレード・クルーズ・グローバル)」への参加だ。管内港湾に「1隻でも多くのクルーズ船に寄港してほしい」という港湾関係者らの気持ちは分かる。ただ、受け入れる港側の都合ばかりを優先して、乗客ニーズや船社の配船パターンを無視して誘致活動を進めようとしてはいないか、きちんと見極めてほしいと思う。
(みなと総合研究財団クルーズ総合研究所・副所長 沖田一弘)

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