ホーム > クルーズニュース > 2024/10/28 【月末オピニオン】 新船就航が続く2025年に、いまから備えよう
例年に比べて、今年は秋の気配をなかなか感じられないと思うのは、私だけだろうか。10月もあと数日というのに、東京では最高気温が25度を超える日が珍しくなく、ネクタイは身に着けているが、半袖のワイシャツを長袖に替えるタイミングを計りかねている。
この時期はまた、国際クルーズ船の「秋の寄港ラッシュ」がピークアウトし始めるころだが、中国発着の大型クルーズ船の運航が本格再開した今シーズンは、西日本を中心にまだ寄港ペースが下火になる気配は少ない。一方で、北日本など一部の港湾管理者などからは、今年のクルーズ船受け入れを振り返り、「来季に備えた取り組みを地元関係者と考える場を設けたい」といった相談も寄せられている。一部を紹介すると・・・
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「昨年春から訪日外国人観光客が増え始め、今シーズンは中国からの団体客も戻り、人気観光地はインバウンドと一目でわかる人たちが目立つようになった。こうした状況の中で大型クルーズ船が寄港すると、一時的にオーバーツーリズムといわれる状況に陥ることがある。特に、大型観光バスの確保が難しいという声は小規模都市から毎日のように聞こえてきた。クルーズ船だけを悪者にする気は毛頭ないが、大きなクルーズ船が接岸していると目立つことは確かで、地元市民からは『この船がやってきたから、どこもかしこも混雑しているんだ』といった趣旨のクレームが寄せられる」
「コロナ禍明けの昨年春から、国際クルーズ船の寄港数は着実に回復している。今季は過去最多に迫る数となったが、来年はそれを2割以上上回る予約が入っており、バース調整ができたのだが、寄港地ツアーに使う大型観光バスの確保が順調にいくか、いまから心配だ。また、昨年夏ごろからCIQ(税関・入出国管理・検疫)に対する船社クレームが頻発しており、今シーズンも大きく改善されることはなかったようだ。バスといい、CIQといい、港湾管理者に文句を言われても、対応できるものとできないものがある」
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10月末に来年のことをあれこれ言うと、鬼に「大笑い」されそうだが、クルーズ船の受け入れ最前線にいる港湾管理者は、そうも言っていられない。2025年の寄港数は過去最多を更新することは確実−という港湾関係者が少なくない現実を考えると、秋の寄港ラッシュが一段落したら、間髪を入れずに来季に向けた受け入れ対策を真剣に検討する準備が必要だろう。11月下旬から12月にかけては、バイキングクルーズが運航する「バイキングエデン」と商船三井クルーズの「ミツイ・オーシャン・フジ」が日本近海で営業運航をスタートする。そして郵船クルーズの新造船「飛鳥V」も来夏デビューを控えている。
国際クルーズ船だけではなく邦船社の新顔も加わる来季は、今年以上に多忙になると覚悟しておくほかはない。一方で、ライバル関係にあった港湾管理者らは、コロナ禍を経たことで「横のつながり」は相応に円滑になったはずだ。来季のクルーズ船受け入れに関する新たな取り組みを考える際には、弊財団も微力ながらサポートできることがあるかもしれない。ご遠慮なく、気軽に声をかけていただきたい。(みなと総合研究財団クルーズ総合研究所・副所長 沖田一弘)